手仕事の未来に向けて
技術継承や人材確保は木工業界の大きな課題であり、私たちも例外ではありません。
どれだけ先端技術が発展しても、経験に裏打ちされたベテラン職人のすべての技術が機械化できるわけではない為です。
例えば、部材をすべて寸分違わず図面通りに切削加工することは現在の最先端の木工機械を使えば簡単にできます。
しかし、その次のその切削された部材を組み立てる作業、これはベテラン職人の経験や勘に頼る部分が非常に大きい作業です。
我々が使う、天然の木材は、木目の幅・木目の流れ方など、ひとつとして同じものがありません。
その材ひとつひとつの性質を見極め、組み立て後に起こるであろう、反りや捻じれを予め予測した上で、それが起こらない様に部材同士の組み合わせを考えた上で組み上げる工芸技術、これはおそらくどれだけAIなどの人工知能が発達しても機械にはできない作業です。
この様な経験に裏打ちされたベテラン職人の技術を伝承するために、3年前から外注先や県内の木工所と連携した若い職人の育成プログラムに取り組んでいます。
またその一方ではCNCルーターやレーザー加工機などのデジタル技術を応用した最先端木工機械の導入を進めています。効率化や安定性ということだけでなく、手仕事とデジタル技術の良いところを組合せ、工芸と工業の新しい可能性を模索したいという、ものづくりへの純粋な好奇心でもあります。
工芸の基本にある「人の手が生み出す美しさ」を胸に、更なる発展に向け、挑戦を続けています。
三重県名張市の木工工房
三重県名張市。忍者の里として知られる伊賀盆地に梅沢木材工芸社はあります。
盆地の名の通り、四方を山々に囲まれた自然豊かな地です。
地場産の桧や杉はもちろん、東は岐阜県の東濃、西には奈良県の吉野と日本屈指の木材産地
の中間に位置し、優秀な木材が集まりやすい環境にあり、古来より林業・製材業・木工業が非常に盛んな地域です。
梅沢木材工芸社では、創業よりこの地の利、この地で磨かれた木工職人の伝統技術に支えられて発展してきました。
大正十四年創業
梅沢木材工芸社は大正十四年、梅沢奈良次郎が創業しました。太平洋戦争中は軍服用の木製ボタンの製造を主としてましたが、戦後復興期からは蝿帳・ちゃぶ台、洗濯板などの道具を手掛け、現在に至るまで永く使用され愛される本物の木の道具を全国にお届けしています。
これまでの百年の伝統の技術を継承しながら、これからの百年の為の技術の革新を続けます。
「適材適所」のモノ作り
木材加工は木を知り、生かして使うことからはじまります。
各製品に適合した樹種の選定はもちろん、1本の丸太の中にも曲げやすい部分、反りにくく通直な部分、硬い部分、柔らかい部分と様々な性質、個体差があります。それら知り尽くし、その木材の特徴を生かして使える部分はどこなのかを見極め、選定した上で、様々な製品を生み出しています。